2021年には流行語大賞にもノミネートされた「NFT」。
バブル的な人気の感もありますが、取引が活発化しており、デジタルアート、メタバース、ゲーム、トレーディングカードなど、その活用範囲もどんどん拡大しています。
この流れに乗ってNFTで利益を出したという人は、税金や確定申告について対応や準備ができているでしょうか?
こどもの作ったデジタルアートにも高い額がついたとか、次々と話題になってるわ。確かに、その場合、税金ってどうなるんだろう?
しっかりと税金の対策をしておけば、NFTの取引をこれからも安心して行うことができますね。
今回の記事では、
●NFTに関する課税関係の現状は、どうなっているか。
●確定申告の対応を放置をすると、どうなるか。
●その上で今、取るべき対応策は何か。
について書いていきます。
NFTを用いた取引については所得税の課税対象となる(国税庁が課税関係公表)

2021年に入って一気に注目された非代替性トークン「NFT」も、商品を制作販売したり、購入、取得したり、売却したりと取引が先行していたにもかかわらず、課税関係のルールが示されていませんでした。
しかし、ようやく、2022年4月に国税庁から、NFTについての課税関係が公表されました。
内容は次のとおりです。
■No.1525-2 NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係
1 いわゆるNFT(非代替性トークン)やFT(代替性トークン)が、暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できるものである場合、そのNFTやFTを用いた取引については、所得税の課税対象となります。
※ 財産的価値を有する資産と交換できないNFTやFTを用いた取引については、所得税の課税対象となりません。
2 所得税の課税対象となる場合の所得区分は、概ね次のとおりです。
(1) 役務提供などにより、NFTやFTを取得した場合
・ 役務提供の対価として、NFTやFTを取得した場合は、事業所得、給与所得または雑所得に区分されます。
・ 臨時・偶発的にNFTやFTを取得した場合は、一時所得に区分されます。
・ 上記以外の場合は、雑所得に区分されます。
(2) NFTやFTを譲渡した場合
・ 譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当する場合(その所得が譲渡したNFTやFTの値上がり益(キャピタル・ゲイン)と認められる場合)は、譲渡所得に区分されます。
(注)NFTやFTの譲渡が、営利を目的として継続的に行われている場合は、譲渡所得ではなく、雑所得または事業所得に区分されます。
・ 譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当しない場合は、雑所得(規模等によっては事業所得)に区分されます。
(参照:国税庁ホームページ)
NFTの税務関係は仮想通貨よりも複雑

国税庁の示した内容を基に整理していきましょう。
この内容によると、国税庁公表前からおおむね想定されていたとおりで、NFTは、取引状況によって、雑所得、譲渡所得、一時所得などが発生するということになります。
●NFTの制作販売による所得
・事業としてなされている場合には、事業所得
・趣味など事業とみなされない場合には、雑所得
●NFTの取得
・役務提供の対価として、NFTやFTを取得した場合には、事業所得、給与所得または雑所得
・臨時・偶発的にNFTやFTを取得した場合は、一時所得
※なお、取引に仮想通貨を介する場合が多いため、仮想通貨の売却による利益が発生すれば雑所得(参考:暗号資産(仮想通貨)での利益発生タイミング)
●NFTの売却
・譲渡としての性格が強い場合には、譲渡所得
・事業としてなされている場合には、事業所得
・事業とみなされない場合には、雑所得
NFTのジャンルごとに整理していきます。
NFTアート
© 1997 Studio Ghibli・ND
(アートの作者の所得)
「クリプトパンクス」に代表されるように、NFTによってアートの世界やクリエイターの価値が高まるきっかけに なっています。
小学生が夏休みで制作した作品にも高額な値段がついたことも話題になりました。
こうした中で、NFTを作って販売することで所得を得る人も増えたのではないでしょうか。
また、NFTの特徴として、作者から手を離れた後の「二次流通(二次販売)」においても、作者に売り上げの一部がロイヤリティとして入ります。
これらの所得について、さきほどの所得区分でいくと、
●NFTの制作販売による所得
・事業としてなされている場合には、事業所得
・趣味など事業とみなされない場合には、雑所得
となります。
(アートの二次流通)
「OpenSea(オープンシー)https://opensea.io/」に代表されるマーケットプレイスでは、出品された多くの作品が日々取引されています。
そうした中で、取引に仮想通貨(暗号資産)を介する場合が多いため、仮想通貨の売却による損益が発生すれば、まず、
●NFTの取得
取引に仮想通貨を介する場合が多いため、仮想通貨の売却による利益が発生すれば雑所得
(参考:暗号資産(仮想通貨)での利益発生タイミング)
となります。
次に、NFTの価値が変動し、損益が生じた場合、
●NFTの売却
・譲渡としての性格が強い場合には、譲渡所得
・事業としてなされている場合には、事業所得
・事業とみなされない場合には、雑所得
が生じることととなります。
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メタバース・ゲーム
The Sandbox(ザ・サンドボックス)のようなブックチェーン技術を用いたゲームプラットフォームなどでは、メタバース(仮想空間)上に土地を購入またはレンタルしたり、アイテム、キャラクターなどを作ることができます。
これらの土地やアイテム、キャラクターは、NFTとして自由に売買することができるようになっています。
イルビウムなど話題のブロックチェーンゲームでもモンスターなどを売買できます。
この売買の取引が発生したタイミングで損益が発生します。
基本的には、さきほどアートで説明したところと同じで、仮想通貨の売却による損益が発生すれば、まず、
●NFTの取得
取引に仮想通貨を介する場合が多いため、仮想通貨の売却による利益が発生すれば雑所得
(参考:暗号資産(仮想通貨)での利益発生タイミング)
となります。
次に、NFTの価値が変動し、損益が生じた場合、
●NFTの売却
・譲渡としての性格が強い場合には、譲渡所得
・事業としてなされている場合には、事業所得
・事業とみなされない場合には、雑所得
が生じることととなります。
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トレーディングカードはもともと投資の対象にもなっているもので、NFTとの相性は非常にいいと考えられます。
アメリカメジャーリーグ(MLB)の野球カードを扱うTopps社は、NFTを活用した野球カードも取引しており、大谷翔平選手やダルビッシュ選手、前田健太選手などのカードも人気になっています。
鈴木誠也選手のカードもそのうち登場し、あっという間に人気になるでしょう。
トレカも、メタバース同様に、売買の取引が発生したタイミングで損益が発生します。
仮想通貨の売却による損益が発生すれば、まず、
●NFTの取得
取引に仮想通貨を介する場合が多いため、仮想通貨の売却による利益が発生すれば雑所得
(参考:暗号資産(仮想通貨)での利益発生タイミング)
となります。
次に、NFTの価値が変動し、損益が生じた場合、
●NFTの売却
・譲渡としての性格が強い場合には、譲渡所得
・事業としてなされている場合には、事業所得
・事業とみなされない場合には、雑所得
が生じることととなります。
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「税金貧乏」にならないようしっかりとした対応を
こうしてみると、仮想通貨に比べ、NFTにかかる税金は、場合分けが多く、複雑な対応が必要になるため、現状では、専門家でない人が自力で正しい整理をするのは難しいかもしれません。
また、いずれも自分で取引履歴の管理をしなくてはいけません。
仮想想通貨の黎明期には、税制の浸透が十分ではなく、税金のことを放置して、後になって、しんどい目にあった人がたくさんいました。
このため、NFTで大きな利益が出ている方は、仮想通貨の「税金貧乏」のようにならないように、特に、しっかりと対応しておいた方がよいと考えます。
申告漏れでも自主申告すれば、加算税は大きく軽減しますが、放置すれば税務調査に入られて加算税は跳ね上がります。
また、放置すればするほど、延滞税はふくらみます。
なお、加算税、延滞税については国税庁の示したとおりです。
加算税
各年分の無申告加算税は、原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15パーセント、50万円を超える部分は20パーセントの割合を乗じて計算した金額となります。
なお、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合には、この無申告加算税が5パーセントの割合を乗じて計算した金額に軽減されます。
延滞税
期限後申告によって納める税金は、申告書を提出した日が納期限となりますので、その日に納めてください。
また、この場合は、納付の日までの延滞税を併せて納付する必要があります。
(参照:国税庁ホームページNo.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁)
NFTの確定申告・節税への対応策
以上の内容から、NFTの税金にかかる現状をまとめると、次のとおりです。
■NFTに係る税制の現状
●NFTに関する課税関係は、2022年4月にようやく国税庁から示された。
●NFTにかかる税金は場合によって所得区分が分かれるため、確定申告は仮想通貨に比べて複雑になり、専門家でない人が自力で正しい整理をするのが難しい。
(取引履歴の管理が難しい)
●仮想通貨の「税金貧乏」のようにならないよう、しっかり対応が必要。
(放置すれば、加算税、延滞税は大きくなる。)
NFT取引で所得を得た人は、確定申告に向けて準備をしていくに当たって、税務署でも、申告方法など定型的なことは相談に乗ってくれます。
ただし、具体的な状況に沿った節税対策などは、当然のことながら、教えてはくれません。
そこで、NFTの確定申告・節税に関する対策として、NFTの税務に精通した税理士に自分の状況を具体的に相談することをオススメします。
NFTについて相談できる税理士をどうやって見つけるの?
全ての税理士がNFTに精通しているとは限りません。
そんな時には、対応できる税理士を代わりに税理士を探してくれる税務のポータルサイトが便利です。
詳しくは次の記事を参考にしてください。
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